挫折の味

渡辺和子さんの本を引き続き読んでいる。

ひとテーマひとテーマ、噛みしめるように読んでは戻りつしているので、それほど厚い本ではないのにまだ半分ほどだ。


今日心に残ったのは、彼女の挫折体験。


渡辺さんの温かで凛としたまなざしは、挫折を味わい、砂を噛みしめる思いをしたからこそのものなのだろう。

砂を噛み締めてもなお、立ち上がり、歩みを進めた経験は、いつしか誇りとなるだろう。

そして、今砂を噛む思いをしている者に、あるいはそう言う立場に立たされたときの自分に、あたたかさを持って接する事ができるだろう。


挫折をまさに味わっているときは辛いものだが、きっと立ち上がり、振り返れる日が来る(あの時のように)と思えることは素晴らしい財産だ。


ベートーヴェンの楽曲に、私はしばしば希望を見出す。


彼の人生の中で、その曲がどんな位置付けなのか詳しく知った上の解釈ではないのだが、


「地獄を見てきたけれど、それでも生きていて、温かな空気や豊かな色彩に囲まれている」


というイメージを何故だか想起させられるから。


地獄からも戻って来られるんだな。

という、安心感のようなものを、ベートーヴェンの楽曲からは感じる。


渡辺さんも、ベートーヴェンも、挫折から立ち上がり、歩んだのだと思うと、私も光のほうへ一歩を踏み出すのだ、と、心が勇気付けられる。